水の滴る色 (4)

2011年10月28日

朝起きたら九時半だった。
八時半だと思っていた起床時間が、九時半だったのは、10月のアゼルバイジャンにまでサマータイムがあるだなんて、とんと知らなかったからだ。
寝起きで紅茶をいれ、砂糖を加えてゆっくり飲む。朝食の代わり。
歯を磨いて、コンタクトレンズを入れて、同室だったイスラエル人と少しだけ会話をして部屋を出る。10時半。

時差ぼけなのかなんなのか、朝なのか昼なのかわからない感覚が一日中続いていた。
それでも昨日電話で話した通り、丘を登ろうと思って町を西へ歩き、階段を探す。まだ町の地理は全然つかめていない。
階段を探す途中、アゼルバイジャンの紙幣を全く持っていないことを思い出し、見つけた銀行のATMで引き出す。引き出した4枚の紙幣でなんとかやりくりしたい。正味2万円。

銀行のすぐ脇に丘へ登る階段を見つけ、登る。階段のすぐ隣はなんだか工事をしているようで、そのまま登っていくと、壊れた線路があった。後でガイドブックを読んだら、「壊れたケーブルカー沿いに階段を…」と記述があって、これのことか、と思った。ここまで地図をほとんど見ていなくて、うろ覚えのまま歩いてここまできたから、だいぶ満足だった。
見晴らしはよかったけれど、頂上の公園は工事中で入れなかった。

そのまま、今度は車道沿いに坂を東へ下り、旧市街の方角を目指した。
きれいな公園がその脇に続いていた。その公園を掃除している数人の男性。通り過ぎ、またその先の公園でも4人の男性が雨合羽を着て、掃除していた。話しかける。でも、全く通じず、英語もロシア語も通じなくて、相手も構わずアゼルバイジャン語で話してきて余計にわからなくて、だからこっちも日本語で返す。わけのわからない30分。でも最後には写真を撮らせてくれた。というか、「上司に怒られるから、写真撮ってもらうなんてできない」とかなんとか言ってたくせに、30分近く喋り、身振り手振り、タバコを吸い出したり、ケータイで僕を写メしたり散々した挙げ句、結局写真を撮らせてくれたから、大したことは無いんだろう。と信じたい。12時過ぎ。

その後大通りに出て、ケバブ屋さんを見つけ、そこに並んでいたら、さっきの4人組のおっさんがやってきて、彼が頼んだものと同じものを食べた。パクチー入りのケバブ。美味しかった。2マナ。

そのケバブ屋さんの目の前にメトロの駅があって、そういえばこの駅の近くに世界遺産が、とガイドブックに書いてあったのを思い出し、旧市街に入り込む。
世界遺産、シルヴァン・シャフ・ハーン宮殿。感動したら撮るだろうと思って、写真料金まで支払ったのに(とはいっても400円程度)、たいしてたいして。やっぱり世界遺産であそこまではしゃいだのは後にも先にもトルコのアヤソフィアくらいだ。
それでも時間の重さは感じれたし、なにより民芸品が素敵だった。こんなお土産みつけたい。

すぐにその宮殿は出てしまって、そのままガイドブックの地図に載っている東端まで行ってみた。工事現場、建設中の高層ビル、モール、人の影がなくなるあたり。その途中の目抜き通りやギムナジウムの子供たち、銀行のセキュリティなど、いろんな人達に出会ったけれど、きっと明日はもっとごみごみしたあたりになるんだろう。
地図の東端からホテルまで引き返し(ホテルは旧市街にある)、途中のスーパーで水、炭酸水、コーラ、バケット、チーズ、ソーセージ、林檎、オレンジジュースを買い込み14マナ。ホテルについてシャワーを浴び、スカイプで長電話。顔だけでも見れて良かった、と暖かい気分になる。
源さんの歌は、「くだらないの中に」がいちばん好きだ。今日はそれを聞きながら夕飯を買いにいった。
目抜き通りの入り口の近くにあるケバブ屋さんで、ケバブ2本。そしたらアイラン(甘くない、飲むヨーグルト)も2個ついてきた。満腹。3.2マナ。

それをホテルのバルコニーで食べていたら、同室の日本人のアツシさんと話し込んだ。バックパッカーの人の話はおもしろい。いろんな人生があるんだな、と感じて、日記をしたため、今日は寝る。
おやすみなさい。