水の滴る色(13)

2011年11月7日(2)

今日で休暇はひとまずおしまいで、明日からまたばりばり動く。
そのつもりで本当に荷物整理や洗濯、料理なんかにたっぷり時間をかけた1日になった。

昨日からなんだかずっと「ソース味」を食べたくて。
海外で外国人に「ソース」の説明をしようにも、どうにも言葉が至らなくて困る。
「ソース」は「ソース」なのだ。
あの茶色い、たこ焼きとかお好み焼きとかとんかつにかける、あの「ソース」。

でも、いくら日本食ブームの世界でも、醤油やわさびは店頭に並んでいても、ソースまでは期待できない。ジャスコとか行けばあるよ、そりゃ。でも、普通の庶民が利用するスーパーには少ない。
そう思うと、世界中のあらゆる調味料を陳列している地元のしがないスーパーも、すごいことなんだな、と思った。ナンプラーなんか、誰が買うよ?日本の食卓で。僕は買ってたけど、4年一人暮らしして2本程度しか買わなかった。

日本の色の選択肢はものすごく広い。

で、ソース。
モスクワの最寄りのスーパーには残念ながらそんなものはなかった。
日本の調味料はわさびと醤油2種類。
前述の通り、僕はキッコーマンじゃなくて、ロシアに流通しているこの醤油を買った。その名も「ソイ・ソイ 」

しつこい味で、しょっぱくて、でもどこか甘くて、ケミカルな感じ。でも醤油の味だ。
醤油味の何か。
でもそれでも久しぶりの醤油味はうまかったなぁ。

で、今日は昼にソースを作ってみた。
大した調味料は揃っていないし、だからといってこの一回の為に買うつもりも無く、前掲の通り、野菜の出汁に醤油と砂糖とケチャップを入れて煮込んだだけ。でも案外、ソース味になった。これでいける、と踏んだので、夕飯はもんじゃ焼きだ。

冒頭の写真はもんじゃの姿。
キャベツが無かったから、野菜の出汁をとった出涸らしの、くたくたになった人参玉葱セロリを、豚肉が無かったからウィンナーを、そのソースに混ぜ、というか最初から入っていたものを混ぜ、そこに小麦粉を入れ、焼く。

その匂い、焦げた色、まさしくもんじゃ焼き…!!!

いや、うまい。うまかった。完成度は低いが、満足だ。
その見た目の悪さに、キッチンにいた西洋人は部屋に引き上げてしまった。ごめんなさい。

皿を洗いながらふと思ったのだけれど、そういえば、西洋の料理は本当に「食材で飾る」というのが似合うような、成形された、デザインされた盛付けを好む。食材もそう。クタクタににこんでその残骸がある、というようにはしなくて、裏ごししたり、なんだり、と、とにかく見た目を精錬する。
日本の料理は「食材で飾る」というよりも、「器で飾る」イメージが強い。
和膳は、少なくとも配膳でサービスしたものは、全てそうだった。

日本料理のお好み焼きやもんじゃ焼きが世界中にポピュラーになんないのはそのせいかもしんないな、と思った。お好み焼きやたこ焼きはともかく(あれは形を整えれば綺麗だし、そもそも「形がある」)、もんじゃ焼きは形が無い。しかも焼きながら食べる。
焦がしたり、生だったり、を楽しむ食べ物だ。こんなの理解して、と強要しちゃいけない。美味いんだけどね。興味を持ったら勧めるけれど、「ワタシ、無理ネ」って言われたらそれまで。